一通の便りが契機に大村湾一周マラソンにわれの参加す（高田久芳氏より）

前泊に来よと招くは福岡の友ら勝手にわが弟子名乗る（注記）

パソコンにてかくも為すると見する裸婦単身赴任の友の手すさび

午後八時嬉野温泉をスタートす大村湾の一周マラソン

向かひ来る車のライトの眩しきに右側危ふし足下見えず

いささかの恐怖はあれど後ろから照らす左側を駆けやすく駆く

安全に右側通行促さるサポートなしつつ友ら見守る

土地感の疎く侘しくわれの駆く闇夜の道をライト照らして

風すさぶ橋上一気に駆け抜ける闇に脚下の高さの知れず（西海橋）

湾内の深き入江の波静か真暗闇に潮の香のして

見上ぐれば空の半球星光る雪模様なる風の冷たく

早春の長崎かくも寒きとはイメージわれになかりしものを

早起きの配達人に道を聞く口を利くのも眠気覚ましに

日の出前の寒さひとしほ身に沁むるフード被れば睡魔が襲ふ

バス停のベンチに仰臥襲ひ来る睡魔をしばし瞼閉ざして

土地感のなければこそすれ爽やかに光溢るる朝に華やぐ

山の町原爆の町西端の長崎の町坂多き街

大村湾一周マラソン肝心の海を見るなくわれのリタイア

わが前を三人のみとの情報にもはやそれまでわれのリタイア

自ビールは友のサービスこのところ買ひたることのなしと自慢の（山口忠俊氏）

総勢が十四五名のミニ大会宴は旅館の二間に足りて（一休荘）

発展は人知れずこそ参加者の熱意の籠る口込みによる

駆けて飲み興じて打ち指す囲碁将棋われ打ち込まれて置き石四子（吉木三孟氏）

名物の嬉野温泉豆腐はわが義歯に心尽くしの土産となれり（宮崎敏郎氏より）

付き合ひのかたじけなくも二泊四日行を共せし友らに感謝す