菜の花にストーク花咲く南房の若潮マラソン緑目に染む

砂浜に人の絶えたる冬の海白帆のヨットが沖に漂ふ

青垣に家は囲まれ内庭に黄なる蜜柑のたわわに実る

紺碧の入江隔てて陸の見ゆ路傍に問へば三浦岬と

荒磯に砕けて消ゆる白波のリズムに乗れば足は軽やか

中腹にゼミに集ひし館見ゆ友の面影眼裏に顕つ

さざ波の平砂浦は逆光に黄金に映えて眩きばかり

館山の町のシンボル菜の花のフラワー街道冬陽の温くし

温暖の若潮マラソンさすがかな半袖姿の主婦の応援

こきざみの裏街道の坂道に足はもつれて景色は虚ろ

「どなたでもどうぞ」と私設のエイドステーション西風寒くコーヒーうまし

魔の距離の三十五キロにけつまづきしこりほぐれて甦り駆く

　開催日　　　　昭和63年１月31日

　主催地　　　　千葉県館山市

　参加種目　　　フルマラソン（通算8回目）

　記録　　　　　４時間９分23秒

　「山の辺」　　４月号