マラソンの歌12/13(15)号ー6
  

平成5年 1993年



「山の辺」の友の追悼大会とわれは定めて「さいたま」に出づ(注記)

制限が厳しく変はりて道草のならずひたすら懸命に駆く

荒川の橋渡りつつ見はるかす麦の緑の穀倉地帯

見はるかす浅き緑は千曲川旅情の歌に心遊ばす

雪景色眺め駆けたる昨年と比べて今年のうららかなるかな

春一番きのふ荒びて暖かし土手にたんぽぽすでに咲く見ゆ

距離半ば十分ほどの蓄へも安堵はならず風の強まる

砂埃巻き上げすさぶ春嵐こやしの臭ひ混じりて臭ふ

春風に向かひ羽ばたく鳥数羽押し戻されて流されにけり

道端にハウス栽培取り立ての苺のうましサービス受けて

駆け歩む友はいくたびわれを抜く足音にても判るがほどに(山岸京子さん)

苦しみに辿り着きたる街角に翁はいまさず冥福祈る

あの世には苦しみ有りや制限に怪しくわれは苦しみに駆く

力尽き架橋の坂をわれ歩む時間内ゴールを確信しつつ

体力を使ひ果たしてゴールイン裸に仰臥青空の下

持ち来る酒とむすびはくれてやる疲労困憊食欲はなく

苦しみは解かれて裸に土手に寝てこれぞ醍醐味わが身うつつに

短歌にと思へど似るは形のみわが体感のマラソンの歌

開催日 平成5年2月7日
主催 埼玉陸上競技協会
参加種目 フルマラソン(通算35回目)
記録 4時間17分35秒(制限時間4時間20分)
ゼッケン NO・4959
注記 歌友の井上勲一翁には昨年大変印象に残る応援を戴く。昨夏ご逝去
「山の辺」  6月号  「ユウ便」  414号(3月2日)

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