マラソンの歌12/13(15)号-21
  

平成5年 1993年



梅雨光る朝の七時にスタートす西湖八周八十キロ走

虚無僧の仲間にあれば「スマイル・ラン」われ呼応して参加するなり

レインボーブリッジ開通記念をわれ駆けてスマイルランがわが夏休み

水平にガードレールが蛇行する淵に沿ひつつ足の竦めり

足すくむ程の高さのガードレールが冠水せしを魂消つつ聞く

迫りたる山に聳えて峰雲の見えて遅まきの夏を愛しむ

長雨に一月遅れの蝉時雨耳に待ちたるやうやくの夏

遅まきの夏陽を浴びて若者は湖上の風を操りてサーフィン

丸のままかじり得るものわが義歯にトマトのうまし塩振りかけて

炎昼を避けて昼寝の一眠り便は起点が民宿「ふるさと」

十キロの西湖周回十時間かけて六周わがスマイルラン

スマイルラン長き一日をわれ終へて見ればあかがね富士は夕陽に

ござを敷き蚊遣りを焚きてバーベキュー民宿仲間を一堂にして

遠来の友に句の友竹の友語らひ尽きず酒を酌みつつ

大根の丸太を肴に廻し食ひ歯形の上に歯形新たに

マラソンを走りて飲めばつきざるは酒も話も夜の更くるまで

声高を叱られたるが一二度しほにつきたる床にバタンQ

前日と翌朝含めて八十キロつじつま合はせのわがスマイルラン

しこたまに飲みたるものを飲み代が宿のサービスかたじけなくも


 開催日  平成5年8月23日

 主催者  「スマイル・ラン」発行人今野廣隆氏

 参加者  松本秀香・坂井忠彬・高野和夫・内田誠一・今坂柳二各氏他

 「スマイル・ラン」 97号

 「山の辺」 12月号


 産経新聞の歌壇に「立秋を迎へて侘し民宿の窓に冷たく雨打ちつける」という歌をみかけましたが、今年の夏休みを象徴する感慨ではなかろうかと思います。

 しかし、スマイルランの参加者は日頃の行いが良かったのでしょう、待ちに待った夏を味わうことができたと思います。

 恵まれたのは天候ばかりではありません。スマイルランを挟んで前後2晩しこたま飲みながら心行くまで歓談することができました。ともあれ、チェックアウトの精算を求めると、何と、飲み代はサービスとのこと。今野氏の顔とは思いますが、余りなるサービスに恐縮この上ないものと思っています。

 本当にすべてに恵まれた楽しい夏休みを送ることができました。感謝申し上げつつ。


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