世界的クライマーともわれ知らず冠たる杯の大会に出づ

ユニークなる大会開く「あきる野市」川を走らせ山を走らす

合併にて地名変はりてあきる野市自然人レースは川を走らす

山道をましてや夜に走るなどわが子供時代は戒めなりき

たまきはる命の水を二リットル持たせ走らすライト必携

午後の五時今にも雨の空模様食料雨具を担ひスタートす

道筋の点滅灯の案内に迷ふことなし二十四時間山岳耐久レース

最高齢者賞を三年連続狙ふ友が先立ち歩むストック突きて（桜井茂雄氏）

振り向けば光の行列連なれり乱視のわれに火花散るごと

ぼんやりと前に明りが灯り見ゆ闇に球体浮かぶがごとく

晴れたれば閏八月中秋の前夜の名月望めしものを

岩鼻のすすきに絡む名月を幻にして雨の振り出づ

覆ひたる繁みが傘の雨の音照らせば夜目に葉裏の白し

雨の降る夜の山径滑り駆く立ち木が頼りに身を支へつつ

手探りに蠢く友に明かり貸す切れたる電池を取換へる間を

東京と神奈川山梨県境の雨の尾根筋夜の行軍

山間に展けし夜景は大月市目尻に遠見足元危ふく

秋霖に山頂ベンチの濡れそぼるままよと座り未明の食事

筋肉の冷ゆるを忌みて早食らひ三頭山頂未明の食事

尻餅も怖じず泥道われ下る突きたる手数は数へきれなし

手袋に付きたる泥を木に拭ふ幹の木肌になすり払ひて

泥道を滑り下りて月夜見駐車場明けて消灯半日の経つ

大会が深夜に絡むが極めつき明けて完歩の見極めのつく

御前山大岳御岳を無事通過下りに下るゴール目指して

所属する名誉にかけてわが完走「日本ウルトラランニング登山クラブ」

悪路より水の憂ひの薄れたる雨が幸ひわれの完走

泥染めの靴下手袋いかんとも哀れ詮なし廃棄処分は