かすみがうらのマラソンの歌気になれど大震災に心奪はる

惨状がリアルタイムに目に写る生き埋めのまま燃えるがままに

湾岸線を走りて一年満たざるにかかる移ろひ思ひもよらず

わが国のながくタブーの危機管理戦前戦後を裏返しにして

起こりてはならぬ事態に対処なき思考停止の戦後日本

パニックも略奪なきも大震災に驚き伝ふ世界のメディア

予約せしバスの運行不明なり災禍全貌判らぬままに

迫りたる長居マラソン震災の緊急事態に急遽慎む

六甲の山を支へて救助待ちもしやと友の消息を問ふ

震災にガス水道の不自由を持ち前明るき便りのとどく（加藤ひろみさん）

確信は三対一に風の出づわが体験のかすみがうらマラソン

四度目の参加のわれは万全に風の出づるを望みつつ駆く

東海道の疲れ残るをマラソンのわがスケジュール崩すことなし

のんびりと足を庇ひて後ろから後ろが常の友らとともに

ばつたりと私設エイドに友のゐるつまむ道草稲荷のうまし　

素直なる答返りて近道を問ひたる友の強がりをかし（小川洋子さん）

強風に小波しぶくれんこん田得たりと用意のビニール袋を被る

伴走の友の姿が気になるも彼は頑健トライアスリート（小針　勉氏）

五時間を目途に走りてあと五キロ切れると決めて飛ばしに飛ばす

手作りの『マラソンの歌』にとらはれて風化しかかる紀行記綴る

　開催日　　　平成７年１月16日　　（翌日1月17日関西大震災発生）

　主催地　　　茨城県土浦市

　参加種目　 フルマラソン（通算39回目）

　記録　　　　４時間56分46秒　　

　ゼッケン　　NO・７３８６