昨年の完走ゆゑにゼッケンの二十四番はわが永久番号

葡萄桃林檎の園の甲州路取れとばかりに道に溢るる

拾ひたる林檎を義歯にて持て余す長き道程紛らはしつつ

雁坂トンネルの開通なりて国道の百四十号線車の多し

笛吹き川を上り詰めたる雁坂峠三度目にして空は晴れたり

眺望のすこぶるきくといふ峠されど今一快晴ならず

振り返り見れば山並み縫ひて来し甲府盆地が遥かに霞む

エイド用荷物が中に鍵かかる雁坂小屋番いかなる齟齬か

山道を片目義眼は怖からむパーテー組みたる友に従ふ

照り付くる西日をせなに荒川に沿ひて駆けつつ体の重し

儂はもう今年が最後と友喘ぐ十歳も若きわれも思ふに（今坂柳二氏）

高麗川に沿ひて下りを駆けに駆く時刻は深夜草木も眠る

正しくは旧道通るを間違へて大回りせし日高バイパス

横たはる石のベンチの冷たさに耐へて少しの仮眠貪る

庭先の厠を借りて落としまへ懐かしきかな響きしぶきて

ともかくも走りに走る完走の可能性の目残るが見えて

昨年は雨が幸ひ持久力まぐれに非ず今年の完走

大きなる泣き声聞かせて娘の電話わが初孫の誕生伝へ来

台風の過ぎたる夜明けの栗拾ひ日課のジョギング足早に出づ