零度割る真冬日続くあさぼらけ当月二度目の伴走に出づ

冬晴れの水平線に浮かぶ富士ほんに二つと見えなき友は

ジョギングのシューズを忘れ照れ臭し履き来し靴をはやりと言ひつつ

盲人に駆けやすからむ休日の埠頭界隈閑散として

駆けやすき大会なれば盲人の参加者あまた快汗流す

人工の造形の美は未来都市近づく春の光あまねく

低空を巨腹晒してジャンボ機の羽田空港近きを示す

欠かすなく真面目に飲みしとユーモアに吾が導く盲人（ひと）は酒好きの人

病院に勤務しながら肝障害床屋の見立てに即入院と

再起初予定通りにゴールイン塩吹く顔に笑みたたへつつ

　開催日　　 　　　平成２年１月28日

　主催地　　　　　 東京都太田区

　参加種目　　　　10km

　記録　　　　　　　１時間０分13秒

　視覚障害者　 　太田礼作氏