肝心のマラソン用具を積み忘れ着きてびつくりトランク開けて

片道が一時間余を折り返す己がどぢを腹立てながら

前夜祭の最中に着きて自己紹介どぢを踏みたる恥を晒して

リズミカルなるエアロビクスに身をほぐすウルトラマラソン六時スタートす

主催者の呼び物としてグリーンライン緑つきなき林道を駆く

露光る朝はまだしも真夏日のウルトラマラソン林道厳し

這ひ伝ふ汗がたまりて靴が鳴る盛夏の日照り猛暑を駆けて

下るとも登り登りて峠越えいく曲りして登りてこしか

美女なるを期待の友の振り向きてわれに失意の顔振り峠（遊　友裕氏）

美女ならぬ失言咎めて存在を認めさせたる顔振り峠（松井艶子さん）

連日の猛暑にうだる日本列島各地の高温更新伝ふ

熱戦が注目の的甲子園夏の大会明日の開幕

氷塊を頭に載せてわれは駆く暑さ対策帽子の中に

エイドごと氷新たにわれは駆く溶けてしぶくも汗に紛れて

想像を絶する苦難を駆けをらむトランス・アメリカ最中の友は（海宝道義氏）

応援に代走送れと友のいふ自ら赴く友もいるなり（注記）

未だしとも潜在能力発見の遅きを悔やむ友の快走（青山　界さん）

追ひ払ふ虻のうるさく付き纏ふあへぎて歩むわれを餌食と

天地（あめつち）のしらじら眩し峠越えウルトラマラソン猛暑を駆けて

食欲の落つるをのどの通りよし素麺お粥の飯盛り峠

鶴岡を彷彿さするエイドステーションサービス満点よきとこ真似て

指先の潰れて痛し下り坂下りに下る帰路の坂道

完走は無理と思ふも関門の距離と時間を計りつつをり

擦れ違ふ車の中より励まさる緑の帽子はパトロール隊

四分前最終エイドの関門を食欲なきまま礼述べて駆く

わが足に思ひのほかの完走を友らの握手に迎へられたり

最高の贅沢なりと閉会の主催者の弁耳にほださる（舘山　誠氏）