マラソンの歌16/17号-11
 

平成7年 1995年





主催者の期待に応へてわれは出づ仮装おはこの虚無僧姿にて

虚無僧のわれの参加はランナーズ賞を取りたる友への祝ひ(小野幹夫氏)

苔むせる石畳道萩往還古道ふさはし虚無僧通る

下枝に触るる天蓋山道は虚無僧視界の狭く難行

人気なき往還道の声援はかへるの合唱野鳥のさへづり

蕗わらび山菜採りのおばさんの声援にわれ虚無僧は駆く

走りつつ蕗の葉むしりて洟を拭く尻をふきたる覚え懐かし

すかんぼを口に加へて懐かしき思ひははるか故郷の野辺

風はらみ空に泳げる鯉幟垣根に覗く庭のたけのこ

新しく観光名所の整へりわが三度目の萩往還路

ささげたる命は今に志士の像萩往還の要所に立ちて

円高にオウム騒ぎのハルマゲドン望みまほしき新しき志士

意地悪を売り物とする新都知事選良都民の嘆かはしくも

仲間らに声援受けつつ擦れ違ふ仮装者われの独り舞台に

歓声を浴びて得意の満面は虚無僧われの編笠の内

来年は仮装者多数をわれ望む今年はわれの独りよがりに

萩往還古道往時にふさはしく仮装者往時の姿歓迎

出産のブランクなきがごときかな子連れウルトラレディー健在(石川尚子さん)


 開催日   平成7年5月4日

 主催    山口100萩往還マラニック大会実行委員会

 参加種目   Dコース・35km

 記録     5時間28分27秒

 ゼッケン    NO・D6

 「長流」    9月号


 日本のスパルタスロンとして名高い萩往還、私には精一杯の100キロがなくなり、やむなく昨年はパスしました。しかし、今回は主催者の小野さんがランナーズ賞をめでたく受けられた年でもあり、かねてから萩往還に仮装者の参加を望まれていたのに応えて、お祝いをかねて虚無僧姿で参加することにしました。

 私は群馬県の安中マラソンでは、毎年虚無僧姿で参加しています。萩往還のDコースは安中の距離とさして変わりませんが、人里離れた山道が多く、観衆の応援は期待できません。それでも、山菜採りのおばさんや、田植え最中の道々の農家の方々の声援を受けて、けっこう楽しく走ることができました。もちろんゴールの萩城跡では、外人観光客の嬌声を浴びて、笠の内の私は得意満面でした。

 人は誰しも、ふと自分に嫌気が差すことがあります。忍術を使って変身したくなる時があるものです。そんな心の葛藤ばかりでなく、変身して夢幻の世界に遊んだことがどなたもあると思います。来年の萩往還で夢を一度実現なさってはいかがですか。楽しいこと請け合いです。老婆心ながら、険阻な山道、車道も頻繁に通るので、重装備と極端に視界を狭める覆面は避けるべく忠告をして。

 上記は駄作ばかりの紀行詠、ご笑覧いただければ幸です。


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